![]() 第49回 1998年8月1日 『経営コンサルタントは学歴も資格も要らない。実力次第。しかし、改善が好きでなくてはダメ。当然ですよね。』 経営コンサルタントになりたいがどうすればよいか教えて欲しい、といったメールが時々あります。そこで、新人コンサルタントの指導経験を基に、個人的なことも含めてざっくばらんに思ったとおり書きます。 経営コンサルタントというのは学歴も資格も不要な職業です。例えば、有名な大前研一の専門は原子物理学で経営とは全く関係ないものでしたし、経営コンサルタントとしては何の資格も持っておりません。しかし、経営コンサルタントと言うよりは経営評論家、または政治評論家です。また、ドラッカーは元新聞記者でしたから書くのが専門で、やはり経営評論家または経営学者でしょう。しかし、本来、経営コンサルタントは評論家ではありません。経営コンサルタントは特定の企業の個別具体的な課題解決のために指導やアドバイスをする人のことです。よって、本来、経営コンサルタントは顧客企業に対して、どんな成果を上げたのかで評価されなければなりません。どんな本を書いたかで評価されるわけではありません。ところが世間では売れる本を書いた人を評価しています。おかしいと思いませんか。あなたはどちらになりたいですか、企業には評価されないけれど世間では評価されるコンサルタントと、その逆に、企業では評価されるけれども世間では無名のコンサルタントとです。 経営のことを全く知らずに、経営コンサルタントが務まるかといいますと、これが務まるのです。例えば、元オリンピック選手が死にもの狂いでがんばった話をすれば、従業員の動機づけに役に立つのでりっぱなコンサルティングになります。実際、企業ではよくスポーツ選手を招いて動機づけ、自己管理、安全衛生などのコンサルティングを依頼しております。また、従業員のストレス解消のために、落語家や漫才師を招いたりしますが、その場合も立派なコンサルティングです。実際、企業ではそのために専門のカウンセラーやセラピストなどを必要としているのですから。つまり経営コンサルタントとは、わかりやすく言えば、どんな内容でも企業が必要とするサービスが提供できれば経営コンサルタントになります。 もっとも、本来の経営コンサルタントは、経営そのものに対する指導やアドバイスをする人ですから、それができないといけません。しかし、その場合でも学歴や資格は要りません。仕事ができればいいのです。その点は、資格がないと仕事ができない税理士や公認会計士などと異なります。また、中小企業診断士という資格がありますが、この資格も残念ながら経営コンサルタントとしては何の役にも立ちません。中小企業診断士は文字どうり、中小企業の診断をする人で治療(改善や改革)をする人ではありませんし、実際のところ診断だけというニーズはほとんどありませんから、仕事がありません。なぜなら、診断するということは、経営者の仕事を評価することであり、企業の恥部をさらけ出すことにもなりますので、よほどのことがない限り中小企業の経営者は診断の依頼はしません。経営者はプライドが高いので、簡単に人に診断を頼んだりしないのです。したがって、診断の依頼があった時には、かなり業績が悪化しているか、もうすでに「手後れ」な場合が多いのです。 企業のニーズはあくまで課題の解決です。ですから、ある課題を解決したいので手伝って欲しいと依頼があった時に、こちらから課題の確認のために診断させて下さいと依頼するのです。したがって、その場合の診断も経営全般にわたるものではなく、あくまで依頼された課題に関する精密検査のような診断になります。つまり、経営コンサルタントの仕事はむしろ課題解決のお手伝いをすることで、経営全般についての診断をすることはほとんどないのです。ただし、赤字が累積して何とかして欲しいといった場合は別です。このような場合は経営全般について診断することになります。しかし、その場合も当然、診断だけということにはなりません。治療または再建しなければ診断する意味がないからです。したがって、治療や再建ができないのなら診断すべきではないのです。これが中小企業診断士が経営コンサルタントになれない理由です。 また、経営コンサルタントの仕事は知識の切り売りではありませんから、いくら本を読んで勉強してもダメです。企業の人たちと一緒に悩み、知恵を出すことなのです。ですから、勉強が好きというより、考えることが好きでなくては務まりません。課題解決に必要なのは「考え方」と「進め方」です。クライアント企業の課題解決のためにはどのような考え方と進め方をすればよいかなのです。それを提案するのがコンサルタントの仕事です。ある企業の特有の課題を解決するためにどうすればよいかなど書いてある本はありませんから、コンサルタントが自分で考えるのです。それができなければ務まりません。良く誤解されることですが、コンサルタントが具体的な改善案を作ることはありません。改善の仕方を説明するために改善例を作ることはあります。コンサルタントは顧客企業の商品やサービスの固有技術に関しては素人ですから改善案は作れません。コンサルタントの仕事は改善の考え方や進め方、改善案の作り方などを指導、助言するのです。 ではどうすればそのようなことができるようになるのでしょうか。それは実務経験しかありません。企業に勤めて仕事をすることです。ただし、経営コンサルタントになるための修行だということを忘れてはいけません。具体的に言うと、まず第一に大企業に勤めるより中小企業でいろいろな仕事をすることです。そうすれば企業全体をいろいろな角度で見られるようになります。また一つの企業ではなく、できるだけ多くの企業に勤めたりアルバイトしたりすることです。そうすれば、いろいろな業界のことや、いろいろな企業の実態がわかります。しかし、こうしたことは非常に危険ですよね。アメリカなどと異なり日本では一つの企業にできるだけ長くいた方が評価されますから。でもそれをあえてやらないと有能な経営コンサルタントにはなれないでしょう。実際に私が今までコンサルティングした業界は、食品、繊維、造船、医薬品、建設、自動車、窯業、鉄鋼、家電、音響機器、フイルム、塗料、鉱山、軽金属、包装、金融、水産、農産、サービス、卸売、小売などいろいろですが、どれも親しみを持って取り組めました。若い頃にいろいろなアルバイトや企業経験をしたからだと思います。私は大学も大学院も親の仕送りはゼロで卒業しましたから。要は、誰にも負けないという自分の専門分野を確立するとともに、いろいろな仕事を経験することが経営コンサルタントになる修行の一つだと思います。 最後に、コンサルタント修行に最も大事なことは、その仕事はなぜするのか、どのようにすればより良くなるのかを常に考えて仕事をすることです。そして、積極的に改善することです。改善できたらそれを絶対に自分の手柄にしないことです。コンサルタントというのは黒子ですので、絶対に自分が表舞台に立ってはいけないのです。目立ちたがり屋はコンサルタントには向いていません。このように努力すれば誰からも一目おかれるようになるか、逆にうさん臭く思われるようになるかどちらかでしょう。うさん臭く思われるのは単に妬みであったり、改善することを嫌う保守的な人たちがいるからです。多くの人は現状維持が好きで変化を嫌うものです。そういう人たちとの葛藤が激しくなると下っ端のこちらが苦しくなります。これを克服できるようにならないとコンサルタントにはなれないでしょう。晴れて経営コンサルタントとして仕事をする時は、若い人が作った改善案が上司や他部門につぶされないようにプログラムの中に仕組みを仕込んでおきます。こういうことも実際に上司を説得したり葛藤を克服した実務経験がなければできないことでしょう。 |
