経営相談どっと混む

第39回 1998年3月1日

『原価企画というものがあります。商品企画段階又は開発段階で製品原価を決めてその原価で製造するというものですが、具体的な方法を示さないで頭ごなしにやる会社が多いので単なる下請けいじめとなっている事があります。』

 原価企画は30年ほど前から自動車産業を中心に普及しております。利益計画から製品の目標原価を決め、ブレイクダウンして一つ一つの部品の目標原価を決めてその原価で部品を作るようにするという考え方です。しかしながら実際には自動車メーカーが部品メーカーに対してその原価でなければ購入しないと言って原価を押しつける事になります。当然従来の原価よりもづっと厳しいものになるので部品メーカーは泣かされる事になる訳です。生き残るためには何とか原価目標を達成しなければいけないので奮励努力する訳ですが、コストダウン手法がわからないので単に利益を犠牲にするしかないということになってしまいます。これを毎年やられるわけですからたまったものではありません。下請けは生かさぬよう殺さぬように管理されるという事です。

 かつてある自動車メーカーから外注管理がうまく行かないということでコンサルティング依頼を受けました。そこで約30社ある1次下請けの中から品質、コスト、納期に関して成績の悪い部品メーカーを選んでその原因を探ってみました。するとこれらの部品メーカーに共通している事は、親である自動車メーカーからほとんど具体的な指導を受けていないという事が分かりました。名目上は指導している事になっているのです。自動車メーカーでは外注先をいわゆるABC管理していたのですが、それが全く機能していなかったのです。つまりAランクのメーカーは自社と同じように指導する。Bランクは月に1回程度指導する。Cランクはほとんど指導しない。という具合です。問題はこのランク付けをどうするか、つまりどういう基準でABCを決めるかという事と、そのランクに沿ってどう指導するかという事になります。しかしこれは建前であって実際には購買担当者の好き嫌いで指導していたのです。購買担当者と外注先とのウマが合わないと結局お互いに遠ざかってしまう訳です。そしてこういうのはBランクの外注先に多い事が分かりました。Cランクの部品メーカーはむしろ親会社より管理レベルが高かったのです。指導を受けていない部品メーカーの方が企業努力をしていたのです。

 あるCランクの部品メーカーの原価資料を見ると驚いた事に数年間赤字であるにもかかわらず親企業にはその事を黙っていました。この企業では自社ブランドの製品を製造販売しておりそちらの方で稼いでいたのです。何故黙っているのかと聞きますと自社ブランドの製品を開発する時に指導を受けたからということでした。この事を私は自動車メーカーの購買部長に言いますと原価資料を見せてくれないのでわからなかったと言っていました。一般に親企業と下請けとは長い間の付き合いでいろいろな事が“なあなあ”になってしまう傾向にあります。こういう場合に私は「ギブandテイク管理」というのを提案しています。双方が対等に何をギブし、何をテイクするかを明確にして、それに基づきお互いで管理しあうのです。企業というのは本来上下も親子もないのです。下請けだからと言って卑下する必要はないのです。実際部品メーカーのおかげで親企業は生きているのですから。

 原価企画に戻りますが、利益計画の段階で開発製品のコストを決めるというのは実際には非常に難しい事です。不確定要素が多いからです。従って大まかな所からだんだんと精度を上げていくという事になります。このためには組織ぐるみで原価管理しないといけません。組織ぐるみというのはもちろんすべての部門のみならず部品メーカーも含めてということです。つまり部品メーカーが協力して製品別に原価管理するという事です。そのためにはまず原価情報を共有化しないといけないことになります。ここに原価企画の難しさがあります。また具体的な原価管理方法や原価低減方法を習得し実行していかなければなりません。これも簡単に出来る事ではありません。時間と努力が必要です。こういう訳で結局原価企画というのは押しつけになってしまうのです。でも押しつけていじめないと企業努力しないのかもしれません。