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4-9 情報を活用するには情報の収集と蓄積が必要である今回は情報を収集、蓄積してデータベースを作って、情報を共有化し、情報を活用して経営に役立てることについて書いてみようと思います。データベースを作るには、まず、データ(情報)を収集し蓄積する必要があるのですが、これが実際には難しいのです。なぜなら、通常、人は重要な情報を人に教えたがらないからです。たとえば、営業員が自分の得意先の顧客情報を他の営業員に教えたら、その顧客を取られてしまう可能性があるし、技術者が自分の持っている技術やノウハウを他の人に教えたら、自分の仕事がなくなってしまうかもしれないからです。 これは、部門単位でも同じことで、自部門のいろいろな情報を他部門に知られたくないものなのです。なぜなら、その部門の仕事のやり方が他の部門に知られてしまうと管理能力がわかってしまうからです。全社共通のデータベース構築に最も反対するのは、多くの場合、役員クラスだと言われています。どの企業でも役員が最も保身に走るものだからです。つまり、情報の共有化というのはそう簡単にはできないのです。そこで、なんとか個人や部門の持っている情報を公開してもらい、全社員で情報を共有し、経営に役立てるようにするにはどうすればよいかについて書いて見ようと思います。 まず、情報というものがいかに重要かという例をあげましょう。富山の薬売りというのをご存知だと思います。今は車ですが、昔は薬を背負って各家庭を回って薬を売り歩いていました。この薬売りにとって命より大切と言われていたのが懸場帳(かけば帳)というものです。これは顧客の氏名、住所、家族構成や年齢、病歴、置薬の名前、使用量、集金した日付と金額などが書かれているものです。つまり、顧客情報と購買履歴です。 この懸場帳を見れば、いつどこの顧客には何が売れそうだということが予想できます。もし、ある薬売りが足を怪我して薬を売り歩けなくなっても、この懸場帳さえあれば他の人が代わって薬を売り歩くことができます。懸場帳は何年もかかって蓄積された顧客情報と購買履歴ですからそれは重要なものです。この懸場帳は親から子へと伝えられ、もし後継者がいない場合には、現在の金額で一千万円から二千万円ぐらいで売買されたそうです。このように、営業員にとって顧客情報と購買履歴は非常に重要なものです。ちなみに、この懸場張が現在ではポイントカードになっており、現在では多くの企業で顧客情報と購買履歴はデータベース化され共有化されているため、営業員個人の財産ではなく企業の財産になっているわけです。 もう一つ例を挙げましょう。江戸時代の商人は大福帳というものに取引内容を記録しておりました。大福帳は現在で言う会計帳簿で、取引の日付順に取引内容及び金額を詳しく記録したものです。大福帳は金銭のやり取りなどを記録したものですから非常に重要です。江戸時代は火事が多かったようですが、火事になると大福帳を井戸の中に投げ入れてから逃げたそうです。大福帳は和紙に墨で書いたものですから、火事が治まった後で井戸から引き上げて乾かせば元通りになるのです。取引内容を日付順に記録するという大福帳の記録方法は、その記録が確かな証拠になることから、いろいろな事件の証拠物件としても使われたほどです。 このことから、現在でも大福帳システムというデータベースとして多くの企業で使われています。つまり、何も加工していない生のデータはいろいろな分析のために重要なのです。たとえば、売上を順次記録するPOS(ポイント・オフ・セールス、販売時点)情報は大福帳と同じです。売上情報を日時とともに記録しているので、顧客のポイントカードと組み合わせれば、誰がいつ何を買ったかが記録されます。顧客情報(氏名・住所・年齢・性別・職業など)と購買履歴(いつ何をどのくらい買ったか)がデータベース化されます。これを分析することによって、仕入計画や販売計画に役立てることができるのです。POSシステムは、単に事務のスピードアップや計算の間違いを防ぐためだけにあるのではありません。 懸場帳や大福帳のように、生の取引情報を日時とともに記録することは難しいことではありません。現在ではPOSシステムのように情報技術を使って簡単に記録できます。生産現場でもPOSシステムと同様なPOP(ポイント・オフ・プロダクション、生産時点情報)システムがあり、工程ごとに品目、数量などを簡単に記録できます。これによって、各工程別、品目別の加工・組立時間がわかります。つまり、コスト計算が正確にできます。さらに、この実績に基づいて賃金計算や生産計画もできるようになります。これと同様に、仕入(購買)、在庫、生産、販売、経理などの情報を統合するERPパッケージなど、いわゆる基幹系システムの構築もできるのです。 中小企業向けの比較的安価なソフトもいろいろ市販されています。また、操作についてもそれほど難しいわけではありませんので、少し訓練すれば新入社員でもできます。したがって、これらの情報は比較的簡単にデータベース化できます。大企業より中小企業のほうが小規模なだけにシステム構築は容易にできます。この基幹系のシステム構築に関してはいろいろに活用できることから費用対効果の点からも十分にペイするものです。また、これらの情報は取引情報(処理データ、トランザクション)がベースとなっていることから、社内で公開し共有化することに反対する人はほとんどおりません。 一方、データベース化が難しいのは、技術情報や管理情報です。最初に書きましたように、個人が保有する技術情報や管理情報は公開したがらないというのがその理由です。その内容は主に、方法、判断基準、管理ポイントなどのノウハウや技術です。これらの巧拙、良否、つまり技術力や管理能力は人により異なり、しかも、人により差異が大きいので、できるだけ優れたものをデータベース化して他の人にも活用できるようにしたいわけです。しかし、最初に書いたように、人は公開したがらないのです。 そこで、まず、トップがリーダーシップを発揮してその重要性を説き、半ば強制的に公開するように仕向けなければなりません。場合によっては公開しない者にはペナルティを課すぐらいにしないと難しいのです。また、逆に、公開した者を優遇したり、その技術やノウハウトを企業が買い取る場合もあります。たとえば、ある熟練技術者がその技術をマニュアル化したがらなかったり若者に教えたがらない場合、企業は何らかの報酬を払ってマニュアル化し、企業の財産として残さなければなりません。 つまり、飴と笞の使い分けでなんとか個人の財産から会社の財産にしなければならないのです。最近、従業員の特許権の取得に対して相当な報酬を払うべきだとの議論がなされておりますが、このような固有技術だけの問題ではなく管理技術についても同様です。たとえば、管理者が各種案件を裁決する場合の判断基準をマニュアル化すればパソコンで自動的に裁決できるので管理者が不要になる可能性があります。 取引情報だけでなく技術情報や管理情報などを収集、蓄積し、経営に活用できるようにしたものをDWH(データウエアハウス、データの倉庫)と言います。大福帳システムとDWHを利用して、全社員がすべてのデータを共有し経営に役立てるようにすることは、現在では欠かせないものとなっています。つまり、全社員の知識と知恵をお互いに利用できるようにすれば、まさに、会社一丸となって困難に立ち向かうことができるからです。 現在では、DWHから有用なデータを引き出すためのデータマイニング(データ探索)という技術もありますので、いろいろ仮説を立てて金となる情報を容易に探し出すことができます。現在の企業間の戦いはすでに情報戦になっています。情報を活用できるものだけが勝つということです。情報を活用するためには情報を蓄積することから始めなければなりません。 Ⓒ経営相談どっと混む
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