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4-15(最終回) 意識改革の方法について

意識改革なくして業務改革はできません。業務改革の方法はいろいろあります。しかし、意識改革なくしては業務改革はできません。言い方を変えれば、意識改革ができれば業務改革は簡単にできるのです。そこで、どの企業も意識改革、意識改革と声を大にして言い続けているのです。しかし、なかなかできません。なぜでしょうか? 

その理由は、業務改革はトップの意識改革ができなければできないからです。意識改革、意識改革と叫んでいるトップ自身が意識改革していないからです。また、意識改革の方法がわからないからです。意識改革の方法を示した本や雑誌はあまり見当たりません。方法が分からないから結局、掛け声だけで終わってしまうのです。“火の用心”と同じです。そこで、30年以上、大企業から中小企業まで業務改革のコンサルティングを行った経験を基に、意識改革の方法について書いてみたいと思います。

その前にまず、通常、行われている意識改革の方法について筆者の考えを書くことにします。その代表例がベンチマーキングというものです。つまり、先進企業のベストプラクティス(成功事例)に学ぼうとする方法です。いわゆる、追いつけ、追い越せの精神で、先進企業に追いつこうと努力することにより、意識が変わるだろうという考え方です。しかし、これは確実に失敗します。

はっきり申し上げて、ベンチマーキングとかベストプラクティスなどというものはあまり役には立ちません。製品の設計や生産方法などハード面で先進企業の事例を真似することはできますが、業務改革については真似できません。あこがれるのは結構です。しかし、実行はできません。経営能力が違うから、経営資源が違うから、組織風土が違うからなどが理由です。

たとえば、昔、自動車メーカーのホンダが社内の報告書はすべてA4一枚と決めました。これならわが社でも簡単にできそうだとマネしようとした企業が多かったのです。しかし、ほとんどは失敗しました。その理由は、報告書をA4一枚にまとめるには、社長をはじめ従業員全員が管理業務より戦略、戦術に係わる業務を重視するようになっていなければなりません。つまり、報告書を書くなどという後ろ向きの業務より、前向きの業務に時間をかけるような組織風土ができていなければならないのです。

筆者が、ベンチマーキングや他社の成功事例がほとんど役に立たないことを初めて知ったのは、かつて日産の100%子会社で業務改革のコンサルティングを行ったときです。すでにトヨタの関連会社でコンサルティングを行っていた筆者は、自然、トヨタと日産とを比較することになりました。日産の子会社の社長は、日産はトップが替わらなければダメだと言っていたのですが、実際に筆者から見てもそうでした。日産にいろいろな改革提案をしてもほとんど拒否されたからです。しかも、検討した形跡すらありませんでした。これはまだ、日産の社長がゴーン氏になっていなかったころの話です。その後、多くの企業で同じような経験をしました。どんなに良い成功事例があっても、そう簡単にマネすることはできないのです。

しかし、筆者は業務改革のコンサルティングを行う際に多くの先進企業の事例を話します。それは、先進企業の真似をしてもらうためではなく、動機付けのためです。実際に業務改革を行う場合には、その考え方、進め方などを説明した上で、その企業に合った方法で実行してもらうのです。先進企業のマネをしようとしてもできません。

以上でお分かりのように、社長の意識改革ができなければ業務改革などできないのです。それを、社長自身が意識改革をしないで、意識改革、意識改革と声高に叫び、現場が意識改革できないことを嘆いている様子を見ると、この企業は永遠にダメだな思います。意識改革しなければならないのは社長自身だと現場の従業員は言いたいのです。

通常、企業というものは社長の能力以上には成長・発展することはできないものなのです。したがって、コンサルタントの仕事は社長が意識を変えるようにガイドすることです。そこで、改めて意識改革の方法について書くことにします。意識改革というからには意識を変えることです。ところが、現在の意識からどのような意識に変えればよいのかが分からないのです。これを示さなければ意識改革はできません。つまり、あるべき姿を明確にすべきなのです。

ところが、意識という言葉すら良く分からないのです。一般には意識を考え方・価値観などと言っていますが、それでも良くわかりません。また、あるべき姿を明確にしろと言われてもできません。そこで、意識を「心構え」と言い換えてみます。それでもよく分からないかもしれません。そこで、心構えを「心の準備」と言い換えてみます。これなら、日常でも使う言葉ですからわかると思います。したがって、あるべき心の準備を明確にすれば良いのです。次に、現在の心の準備からあるべき心の準備にどう変えるかです。

順に説明します。まず、あるべき心の準備を明確にするとはどういうことでしょうか。それは、何事もそうですが、何かをしようとするときに、その目的、考え方、進め方、方法を理解すればあるべき心の準備が明確になります。たとえば、地震に対処するためのあるべき心の準備は、その目的(災害を最小限にするために)、どのような考え方で(人命を第一にして財産は第二にする、火を消すよりもまず身の安全を確保する、など)、どのような進め方(手順)、方法で対処するかなどを決めておき、このことを頭に入れておく(覚えておく)ことです。

この例は容易に理解できると思います。しかし、理解できたからと言って、実際に地震が起きた時にその考え方・進め方・方法にしたがって行動がとれるとは限りません。そこで、次に行動が取れるように訓練しておく必要があるのです。つまり、体が動くようにしておくことです。ここまでするによって意識を変えることができるのです。

つまり、まず、あるべき心の準備(あるべき姿)を理解し、覚え、次に行動できるように訓練をしておくのです。これで意識改革ができることになります。業務改革を行うときにも、心の準備とその訓練をしておけば行動ができる、つまり、業務改革ができるということです。つまり、業務改革の目的、考え方、進め方、方法を明確にし、理解し、それを周知徹底し、さらにそれを訓練して身につけることです。

業務改革のためには多くの行動(作業)をしなければならないので、作業を体系化あるいはプログラム化しておく必要があります。そして、作業ごとにその目的、考え方、進め方を明確にする必要があります。したがって、目的、考え方、進め方も体系化されることになります。これらを理解し、周知徹底し、身につけてもらうのです。このためには時間がかかります。中小企業でも6ヶ月、大企業では8ヶ月から1年ぐらいかかります。大勢の人の意識を変えるのは大きな川の流れを変えるようなものだからです。

ところで、これらについての概要は既に第1章から第3章で示したので、参照してください。また、これらの内容の解説方法や周知徹底の方法、あるいは訓練方法はコンサルティングそのものですし、ノウハウでもあります。コンサルティング活動での説明や実習・実践作業を通じて理解し、身につけてもらうことになります。

また、業務改革のためには各ステップの作業だけでなくマネジメントも必要ですし、コミュニケーションも必要です。たとえば、部門間にまたがる改革課題はどの企業でも10以上リストアップされます。それらの課題を解決するには、大企業であれば課題ごとにプロジェクトチームを編成しなければなりません。したがって、10以上のプロジェクトチームのマネジメントが必要になります。中小企業であれば一つのプロジェクトチームや部門長会などで、すべての課題について検討すればよいと思います。

これらのマネジメントも同様に目的、考え方、進め方を明確にし、理解してもらい、周知徹底し、訓練する必要があります。その上でなければ課題解決はできません。なぜなら、意識が変わらない状態では課題解決はムリだからです。また、全体のマネジメントももちろん必要です。ごく簡単な例を挙げます。マネジメントの中に目標管理があります。成果目標を決めておき、目標達成度合いを管理するわけです。また、業務改革は社長以下全員参加が必要であることを理解してもらい、周知徹底します。社長や役員が自らの業務を改革することで範を示さなければ企業全体の業務改革などできないのです。

何度も言いますが、業務改革が難しいのはトップの意識改革が難しいからです。しかし、実は、大企業の業務改革はそれほど難しくないのです。なぜなら、大企業のトップはサラリーマン経営者ですから業績を上げなければ降格されるからです。このため、トップが率先して活動に参加し、自分の業務の見直しを行います。一方、中小企業の業務改革は非常にむずかしいです。なぜなら、中小企業のトップは通常、オーナー経営者ですから業績が悪くても降格されないからです。会社は俺のものだ。会社をどうしようと俺の勝手だ、俺の意識を変えるなどとんでもない、というのが中小企業の社長の本音のようです。

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